【『パラエストラ』に日本語表記を変更】
PARAESTRAネットワークでは、日本語での名前表記を
海外などで定着している『パラエストラ』に変更しました。
なお「パレストラ」はパレストラ・ジャパン株式会社の登録商標であり、
同社および「パレストラ合気道クラブ」は当ネットワークとは別の組織です。

若林太郎プロフィール
第3回 「DESAFIO」

 今日は鶴屋からチケットを貰って、プロ柔術興行「DESAFIO」を見に行った。ブラジルの現役トップのムーヴはなんとも素晴らしく、特に上4試合のブラジル人選手の強さには目を見張らせられた。日本の柔術界にとっても、世界王者の試合を生で見られるというのは意義深いことだ。ぜひ第2弾、第3弾の開催に期待したい。
 しかしイベント運営面では、初興行ということもあって混乱も大きかったようだ。会場に入って驚かされたのは試合場の狭さ。1メートルちょっとの高さに設営された約18畳分の正方形の試合場だったのだが、レッドゾーンなどもないため場外に出る=観客席に落下 ということになってしまうのだ。実に危ない構造なのだが、細心の注意を払ったレフェリングにより、事なきを得た。しかしこれはレフェリーが賞賛されるべきことであり、試合場がこれでいいということではない。ここまで狭い試合場だということを、選手もレフェリーも会場に入るまで知らなかったというのも問題だ。試合場の広さなんて、会場図面を作る段階で明確にわかるハズだからである。これはぜひ改正していただきたい。
 もう一つは体重問題。こちらは大きな怒りを持って訴えたい。問題となったのは第7試合のマリオ・ヘイス vs 渡辺孝の一戦。この試合はペナ級の試合として渡辺にオファーが出され、ビジョンでのカード発表にもペナ級と明記されていた。
 しかし大会2日前になってやっと届いた、契約書にはなぜかレーヴィ級の記載が。あわてた渡辺サイドが確認を取ると、大会スタッフは「ペナ級で間違いない」と明言。ペナ級のリミットは66.9キロ。道衣を着て計量する場合は69.9キロというのが一応の常識だ。(3キロもある道衣はそうないとは思うんだが。)ちなみにレーヴィ級のリミットは裸で72.9キロである。
 しかし大会前日の夜になって、大会スタッフから渡辺サイドに電話が入る。相手のマリオ・ヘイスが裸で71.5キロあるというのだ。「相手は膝も悪いし、落とす気もないみたいだから、レーヴィでやってもらえませんか。」という内容だったという。渡辺としては、厳しい減量に望んでペナに体重を合わせているだけに、信じられないような理不尽さである。もちろん試合自体を拒否する権利も渡辺にはあったが、すでに地元・新潟から東京に向かう車中にあった。
 結局、主催者サイドの強い希望もあって渡辺サイドが折れ、裸で70キロ以下というのが、最終的な契約体重となった。しかし直前になってのドタバタに、渡辺のストレスは大きなものだったという。
 そして当日。試合は素晴らしい内容だった。負けたとはいえ、茶帯ながら世界王者の実力をかいま見ることができたことは、渡辺の大きな財産になるはずだ。そういう意味では、この試合は実現して本当に良かった。
 しかし事前のコールや場内映像は“ペナ級”のままであった。裸で70キロという体重は、ブラジリアン柔術においてはペナ級とは呼べない。場内映像の訂正が作業時間的に無理だというなら理解できるが、場内アナウンスで一切訂正や説明が行われず、ペナ級のままだったのは納得がいかない。選手に対しても、観客に対しても嘘をついたわけだ。
 これには私自身も非常に頭に来た。すぐ抗議することも考えたが、試合中ではあるし、タイミングを待つことにした。運営慣れしていないスタッフに、イベント中に抗議してもパニックになるだけだし、何の解決にもならないからだ。
 閉会式の終了を待って、本部席の進行ディレクター役と思われるスタッフに、この件を抗議した。すると「孝さんが了承したんだから、しょうがないですよ。」と、まるで渡辺に非があるかのような返答。さらには「今じゃなくて後にして下さい。」と強い調子で逃げられてしまった。
 減量したことのある方にはご理解いただけると思うが、最後の2キロ、3キロを落とすときは本当に苦しいものだ。通常体重の72キロから5キロの減量に望んだ渡辺の努力は、一方的に、そして理不尽に踏みにじられたわけだ。相手が減量すれば内容は全然違っていたなんていう気もないし、マリオ・へイスの勝利に異をとなえるものでも、もちろんない。へイスも、渡辺も、そんなドタバタを忘れさせるほど素晴らしかった。そんな素晴らしい試合に、こんな下らない出来事で、イヤな思い出が付随してくるのが残念でしょうがないのだ。
 主催者の誠意のない対応に、選手が泣き寝入りするのは見過ごせないので、厳しく書かせて貰った。よもや公式記録がペナ級と発表されることはなかろうが、関係者には猛省を促したい。

11月1日(土) 若林太郎

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